敷地は京都府北部の地方都市舞鶴。周辺は古くから残る民家や近年建てられた住宅、低層アパートなど様々な時代の多様な建築が無作為に建ち並ぶ住宅地。一方、農地から、住宅地へと徐々に変化した地域であるため、現在も敷地北側には田が残り、北西には愛宕山を望む豊かな自然環境を持っている。
建主は、このような周辺環境になじむ住宅を希望した。我々も時間の変遷を残す周辺環境を好ましく感じた。設計は、都市的で均質な建築はこの環境にはふさわしくないと考え進めた。
全体計画として平屋建てを提案し、高さを抑えることで、周辺環境に対する存在感の軽減と愛宕山を望む景観変化を最小限にとどめた。
配置計画は光と風、雪を考慮しながら、敷地南に車2台分のガレージ、中央に母家、北に倉庫と東側の接道に対して用途ごとのボリュームを凸凹に並べた。ガレージの東側には、玄関アプローチを兼ねた大きな空地を接道に面して設け、住宅と周辺環境・地域を柔らかく繋げている。空地に面して母家の開口部を受け、光と風を内部空間へ導き、外との関係に連続性を持たせた。
外観は母家をグラスファイバーシングル、駐車場を鋼板、倉庫をフレキシブルボードを用い、それぞれ3つの全く異なるテクスチャーにより住宅を構成し、多様な表情を持つ周辺環境になじむものとした。
今後はこの住宅が建主と共に地域になじみ、豊かな景観を形成する一部となることを望む。また、この計画を通じて、地方都市に多く存在する、このような住宅地に建つ住宅建築の在り方を示すことができたのではないかと考えている。