敷地は昭和以前に山の斜面を切り開いて造成された雛壇状の古い住宅地の一角に位置し、北側眼下には池が広がるを眺望の良い敷地である。
夫婦と小さい子供の為に計画したこの住宅は、既存建物の老朽化と職住一体の生活をしたいという建て主の要望から建替えの計画が始まった。
前面道路に沿った既存ブロック塀を全て撤去したが、既存の宅盤をいかしつつ、アプローチを緩やかな雑木の山道とすることで、元からあった山の地形を喚び起こした。
その山道から建物に各所に至るまで、周辺環境や敷地の高低差を生活の中まで展開し登りながら変化していく風景の楽しさが生活の中に落としこんだ。
整形で無い敷地に対して、池に面した庭を囲うように建物を配置することにより、環境を取込みながら、2m程度あがった宅盤の土を受けるガレージの高さを調整し外部からの視線をコントロールした。
パソコンが一台あれば仕事ができるという建主は、家の中で場所を決めず気ままに仕事がしたいという要望から、吹抜に跳出した床、フリースペース、ダイニングテーブル、ワークスペースなど、家人が気ままに場所を選択でき、その時々の状況に対応できるフレキシブルな空間は、小さな家の中でのノマドライフを実現している。それらの場所は家族の集まる大きな空間に接続し個々に気配を感じられ、その距離感を調整しながら自身の居場所を設定する事が可能になっている。
北側の池に相対して立つ高さ4.2mの本棚は、LDKと4つの空間(玄関、主寝室、各子供室)を分けている。本棚の間から目にする多様な景色から日常の無意識な情景の中に小さな気づきが生み出されることを期待した。